市ノ丈物語 (大葛)

=真澄記= 

なか昔、市之丈という鉱夫がいた。 

女のもとへ通い、小紫という遊女をかどわかして連れてきたが、その両人ともここで死んだ。 

時の人が唄って言うことには、 

「しらぬ山路を市之丈と連れて、今は大葛の土となる」 


この唄は、ところどころの鉱山で、ざるあげ唄、石からみぶし等に今も唄う一説である。