=真澄記=
この寺の前に古塚がある。そこに大藤が生ている。この藤には蛇が棲むと言う。
清い泉がある藤は年毎に茂り立ち、這い廻って堂の軒先と塞ぐようになった。
願生坊が伐り捨てようと考えていた夜、夢を見た。
藤の元に女た立って物思っている。願生坊が怪しく思い、問うた。
女は答えて「私はここに何年も隠れ棲む大蛇です。この藤の森がまだ小さかった頃から棲んでいます。もし、この藤を伐らないでくれたら、末代まで寺を守り、泉を守り、火の災いから守りましょう。
長泉寺の名はあるけれど、里の子等は今はもっぱら藤井寺、藤寺と言う。