小野小町伝説Ⅱ<百夜通いの逸話>(雄勝) 

=真澄記=

都の暮らしに疲れ、故郷を懐かしんだ小野小町は故郷の出羽(秋田)に帰り、庵を造り、静かに歌を詠み、暮らしていました。 


しかし、都で小町に想いを寄せていた深草少将が、都での役職を捨てて郡代となって出羽にやってきたのです。 

少将は小町に会いたいと文を送りますが、小町は「私を心から慕ってくれるのなら、毎日1本づつ芍薬(しゃくやく)を植えてください。それが100株になったら私の心をあげましょう」と返しました。 


少将は返事を受け取った日から野山を巡って芍薬を探し、植え続けました。 

いよいよ100日目の夜、この日は朝からひどい嵐でしたが、 小町と会える日がきたことを喜ぶ少将は、従者の止めるのもきかず100本目の芍薬を植えに出かけます。 

しかし、嵐はむざんにも少将の渡る橋を押し流し、少将は亡くなってしまいました。 

小町は深く悲しみ、 二ツ森に少将の亡がら葬むり歌を捧げました。 


「花の色は うつりにけりな いたずらに わが身世にふる ながめせしまに」 


今に残る芍薬塚

真澄の描いた芍薬塚

深草少将の塚

二つ森遠景