鉢巻して寝る(一関)

=真澄記=

山居の村に男が二人、それぞれ村の女に言い寄った。

頭のいい女は、一人に「夜になって偲んできてくれ。私は寝てるから布団に入って来て。」

もう一人には「暗くなったら家に来ておくれ、私はいないけど先に布団に入っていてくれ。」


男は夜になって偲んできた。屏風の向こうには布団に誰かが寝ている。

この辺の人は老いも若きも、男も女も頭に鉢巻をして寝るのが習わしだ。

男は布団の人をひたすら女だと思って、同じ枕に手を差し出せば、中の男がその手をとって自分の懐に入れた。


胸にあるべきものがない。男は「お前は男か!」と驚いた。もう一人の男も驚き起きて、互いの鉢巻を見ながら「どうしてここにいるのだろう。」と明るくなるまで語り合った。

世が明けた頃、雪に倒れそうな中垣の向こうから、女が覗いていた。