=真澄記=
分け入って泥湯山の麓になる。温泉ののもとに天狗山といって、非常に高い岩嶺に松が生え、紅葉した木など、大変趣きのある風景である。
この山元に旧温泉(もとゆ)と言って、浅い流れがある。
新湯には多くの小屋が建ち並び、人もたくさん集まってくる温泉である。
季節が過ぎると浴客も去って、どの小屋も壊れるままに放置され、柱ばかりになっていた。
湯桁は二つ並んでおり、今ひとつは屋上から木の樋に湯を流して、内湯に滝に流している。これは病人の頭や肩を湯滝で打たせる小屋であった。
湯神(ゆのかみ)はささやかな御社ながら清浄に奉られてあった。