=真澄記=
旭岡山神社には長者伝説がある。
酒の泉があったのは、天狗館の麓あたりであろう。
天狗館というのは、今で言う廻館をいう村であり、今は背鵜尼(うらやま)であるが、旭岡の旧社地の峰である。
陸奥の平泉にも泉酒という土地があり、酒泉の跡である。
そのあたりでは、正月の行事に「やらくろずり」というのがある。その囃子言葉に「泉酒が湧やら、去年の酒の香がする。」と唄い、他のところでは、「今年酒が湧やら。」と唄うを言う。
また、雄勝郡東鳥海山(湯沢市)の麓の杉の根本から酒が湧きだしたという話もある。神社の別当は世に怪しく広がるのを恐れて秘密にしたので、隣の人も知らなかったと言う。