岩倉温泉

=真澄記= 
湯は冷泉の名で呼ばれているが、その効力はよく知られている。 

この湯には皮膚病を病む人が多く訪れ、褌(ふんどし)のしていない男、湯巻をしない少女や老女もいる。 
蟹目釘(頭が半球になった釘)をひしひしと打ち込んだような肌をし、片鼻が赤く腫れ上がり、鼻柱がくずれ、又は落ち窪んだ男女などが、みな我が物顔に、誰に恥らうこともなく、鼻声で歌い あるいは親しそうに語り合っている。

この温泉は、「ヘボの湯」とあしざまに言われていることもあり、人目を恥じ、湯気を恐れて湯に入らない人も多いが、医者もあきらめた持病や脚気、永年の眼病なども治ったという例が多い。 
何回も試して、「ヘボの湯」の名を返上しようではないか。

岩倉温泉

湯の神の社