かんじきの由来(雄勝)

=真澄記= 

何がしかに行こうとも、ここを出ると、野も田面(たづら)も真っ白な波が来るように吹き渡るは、ただ海の上を行っているように思える。 

田や畑、川面などをまっすぐに行くには「かんじき」なる杉の枝を束ねて曲げて、靴のように履く。 


いにしえ、源氏の義家が阿部のやから(阿部のたかとうか)を攻めようと、軍を進めた時、にわかに大雪が降り、道を進むことができなくなった。 

この時、兵を集めてあたりの杉の枝を折らせ、これを曲げて縄で束ねて履いてみたら、楽に進めた。 

この時より今の世まで、「かんじき」と言って里人は使った。 

この時の雪は時ならず神無月に降ったため、「阿部のやからは、神宮寺の淵に住むあやしいやからなれば、時ならぬ雪を降らせたのだろう」と語る者もいた。 

「かんじき」のおかげで助かった。