=真澄記=
この野にあやしい狐がいた。
十五歳になる童(男の子)が、草刈に出ていると、かわいらしい十三四の少女が出てきて、この十五の男の子の手を引いて大きな屋敷へ連れて行った。
少女はこの子を自分の夫として月日を重ね、男の子をもうけた。
わが子が行きかた知れずとなった親はたいそう悲しみ、あらゆる神に祈っていると、その年の暮れになって、男の子がふっと門の前に立っていた。
親どもは夢うつつかと喜び、涙に袖を濡らした。「これはきっと狐のしわざであろう」と神に感謝したそうだ。