八郎潟の名月(男鹿の秋風)

=AKOmovie記= 

真澄は仲秋の名月を八郎潟の湖上で見ようと、東湖八坂神社の神主鎌田筑前と小舟に乗って湖上に出ます。 


<琴の海>=真澄記= 

月はまゆずみのようにかすんでいる太平山のあたりからヌッとさしのぼった。 

水は緑に見え、砂も明らかに照らされて、遠く近くの水面がくまなく見渡される。 

こんなすばらしい眺めがほかにあろうか、、などと話しながら、舟をこぐのを止めて、ただよわせて遊んだ。 


たしかなことではないが、この湖を昔、「琴の海」と呼んだという伝えがある。 

近江の湖が琵琶の形をそていることから、そう名付けられたことに例えて、ここを琴になぞらえたのであろう。 


岸を遠く離れて、一団の雁が雲のように渡っていくが、さすがに月を曇らすようなことはないが、過ぎ去っていく趣きはたとえようもなく素晴らしい。 


夜のふけるまで舟を漕がせて、飽きることなく月を眺めて、楽しげに詠う主人の情をうれしく思った。 

「いつまでもきりがない」と鎌田の家に帰り、まだ床に就かないうちに鳥が鳴いてしまった。 


=AKOmovie記= 

次の日も、誘われるがままに塩口の浦から湖に出ます。 


<塩口の浦>=真澄記= 

あちこちに寄って、語り暮れて塩口の浦に着いた。 

月は杜吉の岳の雲から現れて、大崎のあたりを照らしている。 

岸辺に山陰が映っていて、さざら波が立っている。きっと魚が泳いでいるのだろう。月の光が黄金色に反射している。 

宵うち過ぎる頃に天王の村に着いた。