五社堂の縁起(999の石段)(男鹿)

=真澄記=

昔、漢の武帝が5匹のコウモリを従えて男鹿にやってきた。コウモリは5匹の鬼に変わった。 

武帝は、5匹の鬼たちを家来として使ったが、一年に一度正月を休ませた。鬼たちは大喜びして里へ降り、畑作物や家畜を奪って大暴れし、しまいには娘までさらっていくようになった。 


困ってしまった村人は、鬼に賭けを申し入れる。 

「あの山のてっぺんまで、一夜のうちに千段の石段を築けば、一年に一人ずつ娘を差し上げる。だが、それができなければ、二度と里へ降りて来ないことにしたいがどうか」と。 

鬼たちは、日の暮れるのを待って、さっそく石段造りに取り掛かった。

遠く離れた寒風山から空を飛ぶようにして石を運び、あれよあれよという間に石段を築いていった。 

これに驚いた村人は、物まねのうまいアマノジャクに鶏の鳴き声を頼んだ。 


あと一段というところで、アマノジャクが「コケコッコー」と叫んだ。 

鬼たちは一番鶏が鳴いたことにびっくり、約束どおり山の奥深くへと立ち去って行った。 

鬼が来なくなって、何か寂しい気持ちになった村人たちは、年に一度、正月15日には、鬼の真似をして村中を回り歩くようになった。 

これがなまはげの始まりだという。