岩手山縁起(盛岡)

<おいわし山>

岩手山の頂きの雪を見ていたら、翁があれは「おいわしの雪といえり。」と言う。

嵩に鷲の姿をした岩があるので「岩鷲山(がんじゅさん)」と言い、「おいわしやま」と言う。

「いわて」は岩手(がんしゅ)の文字で、岩鷲(がんじゅ)のことで、岩城判官の公達「厨子王丸」の御霊を加美として祀る山であると言う。

津軽にある岩樹山に峰には「安寿の姫」の御霊を「安珠姫」として祀り、岩木大権現とあがめている。

また、この岩鷲山の頂の霧が嶽というところには今も鬼が住んでいると言う。


<名鷹いわて>

林を歩け小鳥の声にも色がある。しかし杣の梢から鷹の翼が見えると皆声を潜める。

そう、このあたりには島渡りの鷹がいて、姿も良いと言う。

昔「みちのく岩手の郡よち奉られた御鷹、世になく賢く立派な御鷹であり、帝の御手鷹にし給うけり。」と。また「名を「いわて」となんつけ給いし」と。そして、大納言み「預かるよう」給われたので、夜昼この御鷹を愛でたと言う。